こういう季節になると

どなたにもあることだと思うのですが,虫の声に聞き入り静かな時をすごような季節

になると昔お世話になった人を思い出しお会いしたい気持ちなることがよくあります

みなさんもおありだと思います。

私が小学生のとき ある日母が「今日ね おにいちゃんが来るよ。」と突然言い出し

たのです。私は初めは何のことかわからなかったのですが 父が会津若松で警察職員

をしていたころの同僚の息子さんが東北大学に入学するので身元保証人になって頂い

たお礼のあいさつのために来られるようだったのです。実際に会ってみると年が離れ

ていることと私の人見知りの性格から黙って観察するだけだったと思います。下宿は

我が家から歩いて十分ほどだったものの遊ぶような学生さんではなかったのでごくた

まにお茶を飲みに来てくれる程度の交流でした。

その〈たまに〉が続くうちに少しづつ私は ‘おにいちゃん’ になじんでいったので

す。

 

 

いま書きながらさまざまよみがえってきます,

ハイキング(松島での蕨取り)に連れて行ってもらったこと,  デパートのレストラン

でごちそうしてくれたこと,下宿を訪ねて行っても本棚は専門書ばかりでマンガがな

くてつまらなかったこと, ある日私に週刊誌を開いて見せてくれたのが もうすぐ

ウルトラマンが終わって新たなヒーローの〈ウルトラセブン〉が始まるという記事

等々  真面目な人でしたがお堅い人ではなく私の前で‘シェー’をやって見せたり映

画,歌謡曲も好きな方でした。

お話も勉強そのもののことではなくいろいろな分野を小学生にもわかるようにやさし

く解説してくれました。

 

私が中学生になるとおにいちゃんも研究が忙しくなってお会いできる機会も少なく

なってますます遊びに来てもらうのが待ち遠しくなりました。当時私の中学校はクラ

スの二割くらいの生徒が英語塾に通っていたと思います。私は塾や家庭教師の指導を

受けたことがないので周りで塾の宿題のことを話しているのを聞くととても楽しそう

に聞こえるので心の中で「塾っていいな よさそうだな」とうらやましい気持ちを

ずっと持ち続けたものです。ですから そのせいか超たまに来てくれる “おにい

ちゃん”に勉強も含めた疑問をいろいろ出したことがありました。

当時はやっていたTVドラマの『タイムトンネル』。そこに出てくる科学者が過去と

未来をさまよってなかなか現在に戻ってくるのが難しいという設定だったので私は何

の気なしに「ねえタイムトンネルってできるの?」と訊いたことがあります。

中一の私の唐突な質問に「んー」と考え込みながら最先端の科学理論を出してその

テーマに近づく話をしてくれたのです。

「今の科学技術では難しい」から始まって,どんなに科学が進歩してもものの位置と動きを同時には正確にはとらえられないことがあるという【不確定性原理】や時間の進み方や重さ長さは観察する人の動きで変わってくる゠【相対性理論】と【原子核物理学】などをことあるごとに話してくれました。中学生には日常の生活からはかけ離れたことなので (ふーん) と訳の分からないことながら〔感覚的〕にこの宇宙には不思議なことがあるのだなあと感銘を受けたことだけは覚えています。今はすぐに調べたりテレビ番組の特集で知ることができますが,この時代はそんな便利さはなかったので ‘おにいちゃん’ が深い世界の一端を垣間見せてくださったと今でも感謝しています。その後博士課程を終えられ関西方面に就職された後で両親から「おにいちゃんはね工学部首席で出たんだよ。」と教えられその重みに感動。

つねに 「勉強だけできてもだめだ人間のバランスが大切なんだ」 と言っていた

のが思い返されます。会いたいなあ。

 

2018.09.27.

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *